2019/1/16
低用量オプジーボ治療の症例報告(12)
症例は68歳女性。
平成30年2月に喀血し、肺癌(扁平上皮癌)が見つかる。
既にステージ4との診断で抗がん剤治療を勧められるも、拒否。
左肺の原発巣に対する放射線治療のみ行われる。(これ、意味ある?)
並行して自費診療クリニックにて免疫細胞治療を6回受ける。
その後は経過観察になっていたが、10月になり脳転移が見つかる。(残存肺腫瘍も大きくなってきた)
脳転移に対してガンマナイフが予定されている段階で、10月6日に当院受診。
全身療法が必要だろうとのことで低用量オプジーボ治療を開始。
1回目投与の数日後に意識レベルが低下し、病院に救急搬送される。
患者さん家族はオプジーボの副作用を疑ったが、脳転移による脳浮腫から脳ヘルニアを起こしていたという診断。(脳転移の最も危険な合併症)
幸い治療が奏効して生還し、落ち着いた時点でガンマナイフによる治療も予定通り行われた。
引き続き低用量オプジーボ治療を希望されたが、ここで問題がひとつあり。
脳浮腫による脳ヘルニアに対して大量のステロイドが投与され、低用量オプジーボ治療再開希望時にも未だ結構な量のステロイドを内服していた。
ステロイドは免疫細胞の力を低下させるので、オプジーボの効果が十分発揮されない可能性が高いと一旦はお断りする。
しかし、患者さん側のたっての希望で10月30日より低用量オプジーボ治療を再開。
最初の治療も含めて3回の投与が為されたあとの11月20日の胸部レントゲン検査で、なんと最大の左肺腫瘤影が消失。
5回投与後の12月18日の胸部レントゲン検査にて、残りの右肺の4個の腫瘤影もいずれも縮小。(未だ腫瘤影は残っているが、1個は消えかかっている)
以上のような良好な経過ゆえ、平成31年1月現在、引き続き治療継続中。
考察(1):肺癌には、やはり良く効く。当院でこれまでに低用量オプジーボで治療した肺癌患者さんは全部で10例。(腺癌8例、扁平上皮癌2例)
うち、CR3例、PR5例、SD1例、PD1例。つまり、全く歯が立たなかったのは1例のみ。
考察(2):ステロイド投与されていても(それも結構な量)、オプジーボが効く可能性があることを示唆する症例である。
考察(3):初回のオプジーボ投与直後に脳ヘルニアを起こしたのは「オプジーボにより活性化された免疫細胞がすぐさま脳転移に対しても攻撃を開始し殺到したため起こった可能性もある」という仮説も考えられる。脳腫瘍や脳転移でその周辺浮腫も顕著な場合には、いきなりオプジーボを使わない方がいいかも知れない。